御縁玉~続エリックマリア物語
エリックマリア クテュリエルのことを、私たちは「健ちゃん」と呼ぶ。
どうして健ちゃんなのかというと、昨年パリで出会った時に、
たまたま同席していたえぐっちゃん(江口さん)が、
ワインを飲みながらエリックマリアのことを、
「その顔は、健ちゃん!!」と、言ったから。
意味不明、理由なんてない、人生なんて一瞬だ、楽しもうぜ~!
の、ノリで生きているえぐっちゃんが、つけた名前。
その健ちゃんと、えぐっちゃんは、京都に一週間滞在した後、
京都に住むカズ(息子)と合流し、大分県にやってきた。
到着は12月27日の予定だった。
午後になってカズのケイタイに電話してみた。
「ところで、何時の新幹線に乗るの?」
「いえ…まだ…みんな上野さん家で飲んでいます」
「もう乗った?」
「いえ、まだ飲んでいます」
「もう夕方だけど、いま、どこ?」
「いえ…まだ飲んでいて動きません」
という具合で、宇佐駅に着いたのは翌28日の0時すぎだった。
こーゆーのを「フランス時間」と言う。
楽しいから一緒にいる、時計の針は見ない、ちょっとヘンな人たち。
4ケ月ぶりの再会は、深夜の誰もいない宇佐駅のホームだった。
チエロを片手に歩み寄り、パリっぽくおしゃれにハグかな?
うふふ…と思っていたら、
イキナリ、ホームの高い階段から、チエロケースがゴロゴロと
音をたてて落ちてきた!
びっくりして見ていると、健ちゃんが、チエロケースを足で蹴飛ばしてころがしながら、
ケラケラ笑っている.。
エッー!!!!!!???????
階段の下から見上げながら、私はつぶやいた。
天才チエリストちゅうのは、楽器を蹴るんか…。
(後で、気づいたんだけど、チエロを入れるケースを二つ持っていて、
一つはスーツケース代わりに使い、ホンモノのチエロはケースに入れ、
カズが持っていた。まぎらわしいちゃね)
眠い目をこすり、寒いホームで再会の握手をしながら、ホントかいな?
これって夢じゃないかなあ~っと思った。
さっそく車で移動。夜中の1時にペンション(ヴイラフロレスタ)にチエックインした。
「疲れたでしょうから、今晩はここでゆっくり休んでください。じゃあ。」と、
言ったんだけど、がぜん元気な健ちゃん。
すぐにかばんから、おみやげを取り出した。
「これ、あなたへ、持ってきました」 高さ40センチくらいもある木彫りの仏像だった。
お~!? こんな重たいものを、パリから持ってきたの~!?
数年前スリランカへ旅したときに、親友の母からいただいたという仏像。
スリランカ地震による津波でたくさんの人が亡くなったその日、
健ちゃんは、たまたま山側にいたために助かったらしい。
「もし、海に遊びにいっていたら、津波にさらわれていたでしょう。
いのちがあって良かったと、そのとき親友のお母さんが、
私にくださった仏像です」と言い、目で合図した。
健ちゃんの視線の先は、仏像の裏側だった。
ん? 底をさわってみたら、何かくっついている。裏返して見ると…
パリで預けた5円玉だった。
セロテープをはずし、5円玉を握りしめ涙ぐむ山ちゃん。
預かっていた扇子を返すシーン。
春のようなあたたかい笑顔で、「アリガトウ」と受け取る健ちゃん。
そして、約束の音楽セラピーの始まり~。
私もすっかりフランス時間にハマってしまった。
思い切り笑い、思い切り泣き、頭をからっぽにして「今」を楽しみ、語り合う。
そんな日々が始まった。
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