御縁玉~続エリックマリア物語

2008年01月22日
その②  フランス時間

エリックマリア クテュリエルのことを、私たちは「健ちゃん」と呼ぶ。 

どうして健ちゃんなのかというと、昨年パリで出会った時に、 

たまたま同席していたえぐっちゃん(江口さん)が、 

ワインを飲みながらエリックマリアのことを、 

「その顔は、健ちゃん!!」と、言ったから。

 

意味不明、理由なんてない、人生なんて一瞬だ、楽しもうぜ~!

 

の、ノリで生きているえぐっちゃんが、つけた名前。 

その健ちゃんと、えぐっちゃんは、京都に一週間滞在した後、

京都に住むカズ(息子)と合流し、大分県にやってきた。

到着は12月27日の予定だった。

 

午後になってカズのケイタイに電話してみた。

 

「ところで、何時の新幹線に乗るの?」

「いえ…まだ…みんな上野さん家で飲んでいます」

「もう乗った?」

「いえ、まだ飲んでいます」

「もう夕方だけど、いま、どこ?」

「いえ…まだ飲んでいて動きません」

 

という具合で、宇佐駅に着いたのは翌28日の0時すぎだった。

こーゆーのを「フランス時間」と言う。

楽しいから一緒にいる、時計の針は見ない、ちょっとヘンな人たち。

 

4ケ月ぶりの再会は、深夜の誰もいない宇佐駅のホームだった。

 

チエロを片手に歩み寄り、パリっぽくおしゃれにハグかな?

うふふ…と思っていたら、

 

イキナリ、ホームの高い階段から、チエロケースがゴロゴロ

音をたてて落ちてきた!

びっくりして見ていると、健ちゃんが、チエロケースを足で蹴飛ばしてころがしながら、

ケラケラ笑っている.。

 

エッー!!!!!!???????

 

階段の下から見上げながら、私はつぶやいた。


        天才チエリストちゅうのは、楽器を蹴るんか…。

 


(後で、気づいたんだけど、チエロを入れるケースを二つ持っていて、

一つはスーツケース代わりに使い、ホンモノのチエロはケースに入れ、

カズが持っていた。まぎらわしいちゃね)

 

 

眠い目をこすり、寒いホームで再会の握手をしながら、ホントかいな? 

これって夢じゃないかなあ~っと思った。

 

さっそく車で移動。夜中の1時にペンション(ヴイラフロレスタ)にチエックインした。

「疲れたでしょうから、今晩はここでゆっくり休んでください。じゃあ。」と、

言ったんだけど、がぜん元気な健ちゃん。

すぐにかばんから、おみやげを取り出した。


 

「これ、あなたへ、持ってきました」 高さ40センチくらいもある木彫りの仏像だった。

 

 

お~!? こんな重たいものを、パリから持ってきたの~!?

 


 数年前スリランカへ旅したときに、親友の母からいただいたという仏像。

スリランカ地震による津波でたくさんの人が亡くなったその日、

健ちゃんは、たまたま山側にいたために助かったらしい。

「もし、海に遊びにいっていたら、津波にさらわれていたでしょう。


 いのちがあって良かったと、そのとき親友のお母さんが、

私にくださった仏像です」と言い、目で合図した。 

健ちゃんの視線の先は、仏像の裏側だった。

 


 ん? 底をさわってみたら、何かくっついている。裏返して見ると…

 


 パリで預けた5円玉だった。

 

セロテープをはずし、5円玉を握りしめ涙ぐむ山ちゃん。

 

預かっていた扇子を返すシーン。

春のようなあたたかい笑顔で、「アリガトウ」と受け取る健ちゃん。

 

 

そして、約束の音楽セラピーの始まり~。

私もすっかりフランス時間にハマってしまった。

 


 思い切り笑い、思い切り泣き、頭をからっぽにして「今」を楽しみ、語り合う。

 


 そんな日々が始まった。