御縁玉③ 健ちゃんin児童養護施設

2008年01月24日

健ちゃんのチエロを、大人だけが聞くのはもったいない。

できれば子どもたちに聞いてほしいな。

そんな願いがかなったお話。


来日前、パリの健ちゃんに、「大分に来たら、Y養護施設で弾いてくれる?」と

メールした時、「もちろんOK!」と、すぐに受けてくれた。

後で知ったんだけど、健ちゃんは、ベトナム戦争の孤児であり、養護施設で育ち、

生後9ケ月でフランス人夫婦に引き取られたそうだ。

 

滞在1日目、さっそく車にチエロを積んで、Y養護施設へ。

ここは、10年前からのご縁で、あたしが行き来している大好きな場所。

園長先生も神父さんも、E先生もお友達。

 

Y養護施設は、いつ行ってもあったかい。

寮母さんや指導員の膝の上に、子どもたちがポーンと乗る。

大人は、子どもを、ふわっと抱きしめている。


施設の中の小さなホールに、子どもたちが60人くらい集まってきた。

近所の小学生も混ざって、さあ、コンサートのはじまり~。

始めて見るチエロ、始めて聞くフランス語、始めて見るフランス人。

バッハの無伴奏の美しい音色を、子どもたちは、じ~っと耳を傾け、

目をキラキラさせて聞いていた。

 

コンサートのおしまいは、この日のためにと健ちゃんが特別に準備してくれた曲、

「君をのせて(天空の城ラピュタ)」だった。

日本語で歌いながら、チエロの伴奏をする健ちゃんを見て、私はポロポロ泣いた。

 

Y養護施設で「君をのせて」を歌い、弾く健ちゃん。

 

  ♪とうさんが のこした あつい おもい


  かあさんが くれた あの まなざし

 

  ちきゅは まわる きみを かくして


  かがやく ひとみ きらめく ともしび


  ちきゅうは まわる きみを のせて

 
  いつか きっと であう ぼくらを のせて♪ 

作曲者, 久石 譲. 作詞者, 宮崎 駿

 

 

詩の意味も、パリでちゃんと勉強をして、心を込めて歌う健ちゃん。

大きな拍手といっぱいの握手を受けてコンサートは、イイかんじで終わった。

 

 

帰りの車の中で、健ちゃんが言った。


「山ちゃん、私は、もう一度ここに行きたいです。

今度は、子どもたちにチエロをさわって、弾いてもらいたいです。

明日?あさって?お正月の日?おねがいします 」


さっそく園長先生に、電話をしてみた。

「どうぞ、いつでもおいでください」という返事だった。


3日後の12月31日、私たちは、再びY養護施設へ行った。

大晦日もお正月も、家族と迎えることなく、寄り添うように暮らしている

かわいい子どもたちが20人くらい、お部屋で待っていてくれた。

 

健ちゃんの、まわりに子どもたちはペタンと座って、モジモジ。

まずは山ちゃんが、健ちゃんの指導のもと、弾いてみる。

もちろんスーパー下手。

下手の後は、弾きやすいもんね!


「さあ、こんどはみんなの番よ。どうぞ。」と、言うと…

「ヤダヤダ、はじゅかしい~」と出てこない。

でも、健ちゃんセンセイが、ニッコリほほえんで子どもたちに弓を渡すと、

モジモジさんたちが、照れながらぽつぽつ前に出て、おそるおそる弾きはじめる。

健ちゃんが、そばで一人一人に援助する。

音が鳴ると、みんなで喜んで、みんなで拍手。

はじめは、ちょっと緊張していたこどもたちの表情が、

あっという間に溶けて、お部屋は笑顔であふれた。

そんなことを、何回も何回もくりかえして2時間ちかく、遊んだ。

 


そこに、とびきりチエロのうまい男の子がいた。

名前は、ゆうへいくん。5歳くらいのクリクリ頭のちっちゃい子。

いすに座っても、足が床につかないのに、ちょこんと座って、

体よりでっかいチエロを、リズムよくどんどん弾く。すごい!

健ちゃんのマネをしてるのかな? 


ゆうへいくんは、スキをみては、弓をゲットしてとびきりの笑顔で、弾き続けた。

そんな、ゆうへいくんを、健ちゃんは、じっ~と見つめていた。

 

 

帰りの車の中で、健ちゃんは、こう言った。


「山ちゃん、ここに連れてきてくれて、本当にありがとう。

私は、あのこどもたちのために、ゆうへいのために何ができるのだろうか…

ゆうへいは、私でした。」


健ちゃんは、8000キロ離れた小さな養護施設で、自分と出会った

この日のことを一生忘れないと言った。

チエロが、子どもたちの笑顔を引き出したステキな一日だった。