御縁玉③ 健ちゃんin児童養護施設
健ちゃんのチエロを、大人だけが聞くのはもったいない。
できれば子どもたちに聞いてほしいな。
そんな願いがかなったお話。
来日前、パリの健ちゃんに、「大分に来たら、Y養護施設で弾いてくれる?」と
メールした時、「もちろんOK!」と、すぐに受けてくれた。
後で知ったんだけど、健ちゃんは、ベトナム戦争の孤児であり、養護施設で育ち、
生後9ケ月でフランス人夫婦に引き取られたそうだ。
滞在1日目、さっそく車にチエロを積んで、Y養護施設へ。
ここは、10年前からのご縁で、あたしが行き来している大好きな場所。
園長先生も神父さんも、E先生もお友達。
Y養護施設は、いつ行ってもあったかい。
寮母さんや指導員の膝の上に、子どもたちがポーンと乗る。
大人は、子どもを、ふわっと抱きしめている。
施設の中の小さなホールに、子どもたちが60人くらい集まってきた。
近所の小学生も混ざって、さあ、コンサートのはじまり~。
始めて見るチエロ、始めて聞くフランス語、始めて見るフランス人。
バッハの無伴奏の美しい音色を、子どもたちは、じ~っと耳を傾け、
目をキラキラさせて聞いていた。
コンサートのおしまいは、この日のためにと健ちゃんが特別に準備してくれた曲、
「君をのせて(天空の城ラピュタ)」だった。
日本語で歌いながら、チエロの伴奏をする健ちゃんを見て、私はポロポロ泣いた。
Y養護施設で「君をのせて」を歌い、弾く健ちゃん。
♪とうさんが のこした あつい おもい
かあさんが くれた あの まなざし
ちきゅは まわる きみを かくして
かがやく ひとみ きらめく ともしび
ちきゅうは まわる きみを のせて
いつか きっと であう ぼくらを のせて♪
作曲者, 久石 譲. 作詞者, 宮崎 駿
詩の意味も、パリでちゃんと勉強をして、心を込めて歌う健ちゃん。
大きな拍手といっぱいの握手を受けてコンサートは、イイかんじで終わった。
帰りの車の中で、健ちゃんが言った。
「山ちゃん、私は、もう一度ここに行きたいです。
今度は、子どもたちにチエロをさわって、弾いてもらいたいです。
明日?あさって?お正月の日?おねがいします 」
さっそく園長先生に、電話をしてみた。
「どうぞ、いつでもおいでください」という返事だった。
3日後の12月31日、私たちは、再びY養護施設へ行った。
大晦日もお正月も、家族と迎えることなく、寄り添うように暮らしている
かわいい子どもたちが20人くらい、お部屋で待っていてくれた。
健ちゃんの、まわりに子どもたちはペタンと座って、モジモジ。
まずは山ちゃんが、健ちゃんの指導のもと、弾いてみる。
もちろんスーパー下手。
下手の後は、弾きやすいもんね!
「さあ、こんどはみんなの番よ。どうぞ。」と、言うと…
「ヤダヤダ、はじゅかしい~」と出てこない。
でも、健ちゃんセンセイが、ニッコリほほえんで子どもたちに弓を渡すと、
モジモジさんたちが、照れながらぽつぽつ前に出て、おそるおそる弾きはじめる。
健ちゃんが、そばで一人一人に援助する。
音が鳴ると、みんなで喜んで、みんなで拍手。
はじめは、ちょっと緊張していたこどもたちの表情が、
あっという間に溶けて、お部屋は笑顔であふれた。
そんなことを、何回も何回もくりかえして2時間ちかく、遊んだ。
そこに、とびきりチエロのうまい男の子がいた。
名前は、ゆうへいくん。5歳くらいのクリクリ頭のちっちゃい子。
いすに座っても、足が床につかないのに、ちょこんと座って、
体よりでっかいチエロを、リズムよくどんどん弾く。すごい!
健ちゃんのマネをしてるのかな?
ゆうへいくんは、スキをみては、弓をゲットしてとびきりの笑顔で、弾き続けた。
そんな、ゆうへいくんを、健ちゃんは、じっ~と見つめていた。
帰りの車の中で、健ちゃんは、こう言った。
「山ちゃん、ここに連れてきてくれて、本当にありがとう。
私は、あのこどもたちのために、ゆうへいのために何ができるのだろうか…
ゆうへいは、私でした。」
健ちゃんは、8000キロ離れた小さな養護施設で、自分と出会った
この日のことを一生忘れないと言った。
チエロが、子どもたちの笑顔を引き出したステキな一日だった。
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