父の「思い出話」あれこれ 第3話

2008年07月09日

 

修学旅行に行けなかった父の願い


 

父親の希望通り勉強はせず、頭スッカラカンのまま高校生になった私が、

 

卒業直前に、ひょんなことから「保健室の先生になる!」と言い出したとき、

 

 父は「あんた、赤チン先生の何がおもしろいんかえ?」と、びっくりしていた。

 

 

でも、両親から特に期待されることなく育ち、

 

進路も含めてほったらかしだった私は、自分でサッサと短大を受験し、

 

運良く採用試験にも合格し、へき地の小学校に採用が決まった。

 

 


その頃から父は、こんな話を繰り返して話していた。

 

 

「学校の先生になるなら、一つだけ頼みがある。

 

家が貧乏で修学旅行に行けん子どもがおったら、

 

ワシが費用を全部出すき、どうか連れて行ってやっちょくれ。

 

 

ワシは母親を生まれた時に亡くし、父親は貧しい大工じゃったき、

 

貧乏のどん底の暮らしでなあ、食べるものもねえもんで、子どもの頃から、

 

海にエビや魚を捕りに行って売って、少しのお米を買って生きてきた。

 

 

お弁当の時間になっても、お弁当がないもんで、

 

おなか空かしたまま運動場に行って、時間が経つのをじっと待っちょった。

 

 

修学旅行は、クラスで一人だけ行けんかった。

 

あの時、誰か先生が費用を出してくれちょったら、

 

大人になったらワシは何倍にもして返すのに…ち思いよった。

 

 

あんたの勤める学校に、みんなが行く旅行に行けん子がもしおったら、

 

教えちょくれ。ワシが金を出しちゃりてえんじゃ。」

 

 

 

 

父の言葉を思い出して

 

 

 

今は、修学旅行の費用は、生活保護のお金から支給されるので

 

生活が大変な家庭も、参加できるようになっている。

 

 

でも、父の言葉が耳に残っていたので、あきら君の時も、

 

ひとみちゃんのときも気になって、ちょっとだけ動いたな。

 

 

数年前のことだった。

 

中学2年のあきら君は、生活保護費から出た修学旅行費を親が使ってしまって、

 

どうなることやら?…と思っていたけれど、なんとか参加できることになった。

 

 


フラリと保健室に来たあきら君に、

 

「かばんある? あたし毎年修学旅行について行くもんで、

 

荷物入れるかばんがいくつかあるんじゃけど、よかったら使ってん」と言ったら、

 

「あ、はい。かばんないです」と言ったので、その日の夜、家に持っていった。

 

 


旅行中、みんなは家族におみやげを買っていたけれど、

 

あきら君はおこづかいゼロだった。

 

八つ橋と奈良漬けを買って、「これ、おみやげ」と小さな声で言ったら、

 

あきら君は、ニッコリ頷いてかばんに入れた。

 

担任のA先生も、あきら君におみやげを買って渡していた。

 

 

ひとみちゃんの時も、同じようなことがあったな。

 

ささやかなことだけれど、修学旅行のたびに父の言葉を思い出して、

 

気になる子どもはいないかな…とキョロキョロしていたあたし。

 


父は、よほどのことがない限り、私に助言も注意もしない人だったので、

 

こうして教えてもらった言葉は、今でもはっきり覚えている。

 

 

 

つづく




コメントをどうぞ!

山ちゃん!(と敢えて呼ばせて下さいね)
ずーっとずーっと前からご活躍を拝見しております。と言っても2年前かな?
2006年3月末に乳がん手術をし、不安で不安でたまらなかった時にNHKで初めてお目にかかりました。TV電話でご出演でしたね。
御著書2冊&オードリーの会の『ひとりぼっちじゃないよ』も速攻買いです。
このブログもすべて拝見しております。
勇気と元気をありがとうございます!!

初コメントのきっかけは“お父様”です。
素晴らしいかたですね。だからこその山ちゃん先生なんだ~と、感動の涙でぐしょぐしょになっております。
先日の、真ちゃんとのお話もとても素敵でした。

カープ地方在住の教育関係者です。
息子は別府の大学でお世話になっています。私は九州、特に“大分”大好き人間です。
これからもどうぞよろしくお願い致します!

投稿者ハッタン:2008年07月10日 23:35

お父上に会いたかったな。今度お写真を、もっともっと見せて、ついでに可愛い頃の泉ちゃんのも。今だって幼児性、多分に持っているけれど。
貧しい中で、温かいものに触れたこの子達、どんなオトナに成長しただろう。きっと小さな種が、大きな葉を茂らせて日陰を作っているだろう。
以前、朝日新聞関係の事業で大分の高校に性教育の話をしに行った事がある。泉ちゃん来てくれて、「私が教えた中学生の子達がこの高校にいると思うが、性についてきちんと話を聞いた子は、性急な性行動に走らない」と嬉しそうに語ってくれた。これは、私達にとって心強い証言です。
暑い暑い。無理をしないで。ごろごろしていて。

投稿者堀口雅子:2008年07月13日 10:45

コメントありがとうございます。とってもうれしいです。父の話、書いて良かったと思いました。書き込みの方の言葉が私の励みです。明日は抗がん剤。つらいけれど、今はやるしかないもんね!!

投稿者山ちゃん:2008年07月13日 23:31

お父様大好きです
大好きな亡きお父様を山ちゃんが思う気持ちが感じられて嬉しいです。人間って死のうが生きておろうがつながっているんだよね。肉体は原子で分解するけど心は分解しないのだよ。大宇宙の中でいつもおとうさんとつながっているやまちゃん。山ちゃん大好きずっ好きこっきーより

投稿者kokki:2008年07月15日 00:22

僕は山ちゃんのおおらかさの原点はどこにあるのかを本を読んで考えました。実際に知らせ7月6日にお目にかかりもっと好きになりました。やはり、お父さんが大好きだったんですね。人のために明るく無我夢中で働くあなたのお父さん。愛と優しさにお菓子を通して実践したお父さん。これは仏教でいう無我の愛の実践ではないかと思います。僕もお父さんが作られたお菓子をいっぱい食べたかったなぁと思いました。愛って何だろう?人を思う暖かさかな。山ちゃん、山ちゃん、山ちゃん何度呼んで呼びたいな。山chan

投稿者こっきー:2008年07月15日 00:36

投稿されたコメントは要承認コメントとして取り扱われ、承認作業が完了するまで表示されないことがあります。