朝日新聞コラム「豊後ジャーナル」8月2日付け⑤

2008年08月03日

連載中の「豊後ジャーナル」5回目です。転載します。

 


パリと日本をつなぐ「御縁玉」

 

 

一枚の五円玉がパリと豊後高田を結んだ…

 

そんな不思議な物語を紹介しよう。

 

 

昨年の五月に乳がんがリンパに転移し、

 

医師から「今のうちに、好きなことをしたほうがいいですよ」と

 

告知を受けた私は、頭がクラクラするほどのショックを受け、

 

家に帰り「これからどうしよう…」と泣いていた。

 

 

すると、一本の電話がかかった。

 

フランスに住んでいる乳がん友達からだった。

 

「久しぶり~!どうしてる?えっ?転移したの!? 

 

じゃあ、早く家に遊びにおいでよ!」

 

 

そんなことをかる~く言う友達も友達だが、

 

「行くわ」とすぐに返事する私も私。

 

 

受話器を置いたかと思うと、旅行社に電話をし、

 

フランス行きのチケットを予約。大学生の息子と娘に電話した。

 

 


 「お母さんの病気は、さらに悪くなったので、

 

今年の夏休みは一緒に旅行へ行くよ!」

 

 


3人の予定を調整して、八月の終わりにフランスへ行き、

 

アンジェという美しい街に滞在した。楽しかった。

 


でも、せっかくなので、花の都パリにも行ってみようということになり、

 

後半の1週間は、パリで過ごすことにした。

 

パリの街を歩いていたら、携帯電話が鳴った。

 

仕事でパリに来ていた京都の友人からだった。

 

 「山ちゃん、今どこ? おぉ!偶然だね。僕もパリにいるんだ。

 

良かったら一緒に夕ご飯でも食べない?

 

ついでに僕の友達の家にも行こうよ」 

 

 

偶然が重なっておもしろいことになってきた。

 

 


私たち3人は友人について夜のパリを歩き、

 

ホームパーティに参加した。

 

 

 

そこが、ヨーロッパで人気の天才チェリストの家だとは知らずに、

 

おいしいワインを飲みながらバッハの無伴奏組曲を聞き、

 

幸せ気分に浸った。

 

 


彼の名前は、エリックマリア・クテュリエル。

 

パリ国立音楽院に主席で入学、数々の最高評価を受けて卒業。

 

クラシック・現代音楽の分野においてヨーロッパで注目されるアーティスト…

 

と聞いても私にはよくわからないが、彼がベトナム戦争の孤児であること、

 

育てのお母さんも乳がんで亡くなったことは、通訳の話からわかった。

 

 

 


日本に帰る前夜、レストランで夕食をしていたら、

 

エリックマリアがお別れに来てくれた。

 

 

「山ちゃん、きっとまた会いましょう。私の扇子をあなたに預けます。

 

あなたも私に何か預けてください。今度会うときにそれを交換しましょう」と言って、

 

扇子を私の手に載せた。

 

 

娘が「では、御縁がありますように、この五円玉をどうぞ」と

 

エリックマリアに渡した。

 

 

 


3ケ月後、彼は五円玉を持って本当にわが家へやってきた。

 

がんの痛みが少しでも和らぎますようにと、パリからチェロを持ってきて、

 

チェロセラピーを毎日してくれた。

 

 


そんな話が映画になった。

 

映画の題は、「御縁玉」。

 

 

先月、パリの映画館で上映され、好評だったそうだ。

 

日本での上映はこれから。

 

一万キロ離れた五円玉の物語、よかったら見てね。

 

 




コメントをどうぞ!

転載頂きありがとうございました。拝読しました。

人の縁は摩訶不思議です。すぐお隣のご近所さんでさえもこんな深い縁にはならないのに・・。エリックマリアさんの生い立ちを今日初めて知りました。泉さんとエリックさんの縁はどうしても偶然にあらず。地球は広いけれど、神様はちゃんと見ておられて引き合わせてくれるんですね。

この映画は・・世界にも発信されるべきです。私もいつか観れる日を楽しみにしています。

投稿者mino:2008年08月03日 22:17