入院4日目

2008年08月21日

佐藤さんは、今朝2時半頃に天国へいきました。

 

 


扉の向こうで、

 

「お母さん!」「お母さん!」「お母さん!」という泣き声が聞こえた時、

 

「ああ、今、旅立っていかれたんだなあ」とわかりました。

 

 

 

バタバタと廊下を誰かが走る音、娘さん達の鳴き声、

 

器具を運ぶ金属の音…気になって私の病室のドアを開けると、

 

ガラス越しにY先生の後ろ姿が見えました。

 

 

 

眠れないまま朝がきました。

 

 

 

共同キッチンでお湯をわかしていたら、

 

目を真っ赤にして赤ちゃんをだっこしている娘さんと会いました。

 

 

「よく、がんばりましたね」と声をかけたら、

 

「山田さん、よろしかったら、お別れをしてくださいませんか」と。

 

 

 

お部屋に行くと、佐藤さんはお化粧をしたきれいなお顔で、

 

安らかに眠っていました。

 

 

 


手を合わせてお祈りしました。

 

 


しばらくすると、お迎えがきました。

 

 


医師も看護師さんも、スタッフも全員玄関に出て、お見送りです。

 

 

その中にたった一人、まだ歩ける患者の私も混ざって、玄関に立ちました。

 

 

娘さんの一人が、担当の看護師の石川さんに泣きながら抱きついて、

 

「ありがとう。あなたがいたから、がんばれました」と言いました。

 

 

 

そして、Y先生に近づき

 

「母は、最後にこの病院に来れて幸せでした。

 

お世話になりました」と言いました。

 

 

Y先生も、泣きながら

 

「りっぱな、お葬式をしてあげてくださいね」と言いました。

 

 


佐藤さんを乗せた車が出発しました。

 

家族の車も出発しました。

 

 

最後の一台が見えなくなるまで、全員で深くおじぎをしました。

 

 

 


1ケ月間、看病をし続け、家族を支えた石川さんのおじぎは、

 

本当に美しかった。

 

 

その美しさに、私は、感動しました。

 

 

 

 


空っぽになった病室を見ると、切なくて、お庭の中を歩いていたら、

 

ソシャルワーカーの安土さんが、「山田さん、少し話しをしましょう」と、

 

そばに来て下さいました。

 

 

 

トトロに出てくる森の小道のような庭に座り、

 

私たちは「人はどこから来て、どこに行くのか」という話をしました。

 

 

 

安土さんは、元シスターだったからかな、死について、

 

逃げないで話をしてくれる大切な存在。

 

 

 


やっと涙がとまり、病室に帰ろうと廊下を歩いていたら…

 

となりの病室から「お父さん!」「お父さん!」

 

と声が聞こえました。

 

 

 


今日も旅立つ人がいるんだなあ…。

 

 


生まれることも、死ぬことも自然のいのちの流れ。

 

 

ホスピスにいると、涙で心が洗われます。

 

 

合掌。




コメントをどうぞ!

人は最期の最期まで何かを伝え残してくださる。
山ちゃんの日記を読んで、佐藤さんの周りの方がその命に敬いと慈しみと感謝をもって、関わられた姿に、何物にも代え難い言葉にならない思いを呼び起こされました。

佐藤さん本当によくがんばられましたね。
ありがとうございました。

投稿者大倉野博恵:2008年08月22日 00:07

山ちゃん
私は、同じ看護師として石川さんを羨ましいと思いました。そして、とても誇りに思います

あなたがいたからがんばれましたって、最高の
感謝の言葉ですね

同じ歳の、男性が亡くなった時、妹さんから
あなたに会えて兄は幸せだったと思いますと
手紙を頂き、苦しいとき、辛いとき、落ち込んだとき、10年以上経った今でも、私の支えになっています

死について逃げないで向き合う事ができる人でいたいと思います
逃げてないか、ごまかしてないか・・・
自問自答しながら、本当に言いたい事が言ってもらえるような聴き方ができるような人になりたいです
改めて、看護師として仕事をさせて頂いている事に感謝します

山ちゃん日記に書いてくれてありがとうございました。山ちゃんに、一方通行でも出会えて良かった・・・その庭で、一緒に語らいたいな・・・

投稿者ピース:2008年08月22日 07:01

大蔵野さん、想像力をいっぱい働かせて私の日記を読んでくださってありがとうございました。ピースさん、看護師さんからのメッセージありがとうございます。私は石川さんが、最後のひととき、ベッドの横にひざまついて佐藤さんの唇をしめらせてあげている横顔を見て、マリア様のような美しさだと思いました。Y先生も、「なんて感動的な瞬間でしょう」とその場にたちつくしていました。おふたりのコメントうれしかったです。

投稿者山ちゃん:2008年08月22日 09:02

山ちゃん、お手紙をいただいた現役養護教諭の宮部です。実は、3年前、私の妹が20代にして天国へいきました。天国へ行く瞬間、妹は、ひとすじの涙を流しました。家族は、その涙に苦しみ続けました。
でも、大倉野さんがおっしゃるように、人は、最期の最期までメッセージを残してくれるんです。
妹が天国へ行った半年後、新井満さんの『♪千の風になって』に出逢いました。すぐそばに妹がいてくれることを感じることができました。
1年後、私と母で、妹が描き残した絵本を出版しました。
2年度、父は、妹の葬儀にお世話になったお寺の仏像を父が自ら漆を塗り、蘇らせました。父が完成させた仏様のお顔がやすらかで、私は、涙が止まりませんでした。
そして…私は、天国へ行った妹が誇りだと言ってくれた『お姉ちゃんは養護教諭!』をがんばって続けていきたいと思います。
山ちゃん、病院の住所ってどうすれば分かりますか?(失敬を承知で聞いてごめんなさい)

投稿者宮部 朋子:2008年08月22日 11:11

こんにちは
病院の居心地はとてもよさそうで
安心しています。やはりおためし入院がよかったのでしょうね。
暑かった夏もいつの間にか終わりですね。お世話係に用事があればなんなりと申しつけくださいね。30分もあれば行き着きますから。   

投稿者きみちゃん:2008年08月22日 14:15

山ちゃん
コメントを読んでいると心地よい風が私まで感じられるようです。
山ちゃんに会いたいと無理なお願いをもつ中学校教師の私ですが、こうしてみなさんのコメントを読んでいると、随分と前から山ちゃんと知り合いのような気がしてくるので不思議です。誰にも訪れる生命の終わりと向き合うことの潔さが私にもあるだろうかと思ってしまいます。山ちゃんに会いたい気持ちはますます募りますが、今は回復を祈ることにします。私の見上げる空は山ちゃんの上にも広がっているのだと感じながら祈ります。お会いできるチャンスを待ちながら。

投稿者植田栄子:2008年08月22日 23:11

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